Matter と Thread は賃貸でも必要? 買う前に決める3つの判断基準

Photo: Jens Mahnke / Pexels
スマートホーム製品の商品ページには、たいてい「Matter 対応」「Thread 対応」と書いてあります。付いていない製品を買うと損をしそうに見えますが、賃貸で最初の数台をそろえる段階では、そこまで気にしなくて大丈夫です。
先に結論を書きます。
- Matter は「同じ値段なら対応品を選ぶ」くらいの保険です。必須ではありませんが、差額が数百円なら対応版を選んでおくと、あとで困りません
- Thread は、ほとんどの人が最初は気にしなくていい規格です。必要になるのは Thread で直接つながる機器を買いたくなったときで、そのとき用意するのは「ボーダールーター」1台です
- **SwitchBot 中心で組むなら、Thread は一度も登場しません。**判断は次の3つの基準で足ります
Matter と Thread は「言葉」と「道路」の違い
2つはセットで語られがちですが、役割がまったく違います。
Matter は、機器とアプリのあいだの共通言語です。Matter に対応した機器は、Apple の「ホーム」アプリ、Google Home、Alexa のどれからでも操作できます。1台の機器を複数のアプリに同時に登録できるのも特徴です。
**Thread は、電波の通り道(無線の方式)です。消費電力が少なく、機器どうしが中継し合う網の目(メッシュ)をつくるので、電池で動くセンサーやロックに向いています。ただし Thread の機器は Wi-Fi ルーターに直接つながりません。Thread と家のネットワークを取り持つ「ボーダールーター」**という機器が別に必要です。
製品ページの「Matter 対応」には、実は3つの形があります。
| 形 | つながり方 | 例 |
|---|---|---|
| Matter over Wi-Fi | 機器が Wi-Fi に直接つながる | スマートプラグ、スマート電球の一部 |
| Matter over Thread | Thread とボーダールーター経由 | Thread 対応のセンサー・ロック |
| Matter ブリッジ | メーカーのハブが他の機器をまとめて Matter に出す | SwitchBot ハブ、Nature Remo |
SwitchBot のハブは3つめの「ブリッジ」型で、Thread には対応していません。SwitchBot のセンサーやロックは Bluetooth でハブにつながり、ハブが Matter に“通訳”して他社アプリに出す仕組みです。
判断基準1:操作に使うアプリは1つにそろっているか
Matter が必要かどうかは、どのアプリで操作したいかでほぼ決まります。
一人暮らしで、操作は SwitchBot アプリと Alexa か Google Home だけ、という使い方なら Matter はなくても困りません。SwitchBot と Alexa・Google Home はクラウド連携でつながるので、Matter がなくても声で操作できます(つまずいたときは連携できないときの確認順へ)。
Matter が効いてくるのは次の2つのケースです。
- **iPhone の「ホーム」アプリや Siri からまとめて操作したい。**SwitchBot の機器を「ホーム」アプリに出すなら、Matter 対応のハブを選ぶことになります
- **家族で iPhone と Android が混ざっている。**同じエアコンを Apple ホームと Google Home の両方に登録できるのは、Matter ならではの強みです
ここで迷う人に私がすすめるのは、差額が小さければ Matter 対応版を選んでおくことです。たとえば SwitchBot ハブミニ(Matter対応)は、Matter 非対応のハブミニとの差が 500円です(2026年9月時点の公式価格)。あとから iPhone に乗り換えたり、家族が増えたりしたときに、ハブを買い直さずに済みます。ハブの選び方はハブミニ・ハブ2・ハブ3の比較にまとめています。
判断基準2:家にすでに Thread ボーダールーターがあるか
Thread の機器を使うかどうかは、ボーダールーターをすでに持っているかで考えるのが近道です。次の機器はボーダールーターになるとされています。
- Apple:HomePod mini、Apple TV 4K(第3世代)の Wi-Fi + Ethernet モデル。Wi-Fi のみのモデルは Thread に対応していません
- Google:Google Home スピーカー(2026年6月発売)、Nest Hub(第2世代)、Nest Hub Max、Nest Wifi Pro、Google TV Streamer
- Amazon:Echo(第4世代)や Echo Hub など一部の Echo
どれかが家にあるなら、Thread 対応の機器を選んでも追加のハブは要りません。どれもないなら、Thread のためだけにボーダールーターを買うことになります。たとえば Google Home スピーカーは 16,800円です。スピーカーとして使う予定がないなら、割に合いにくいと私は考えています。
もうひとつ、ボーダールーターのメーカーが混ざると、Thread のネットワークが別々にできてしまうことがあります。これを解消するため Thread 1.4 で設定の共有が規格化され、2026年1月からは 1.4 が認証の基準になったとされていますが、各社の対応時期にはまだ差があるとされています。初心者のうちは、ボーダールーターを1社にそろえるほうが無難です。
判断基準3:買いたいのは「赤外線家電の操作」か「電池で動くセンサー」か
賃貸のスマートホームで最初に自動化するのは、たいていエアコン・照明・テレビです。これらは赤外線リモコンで動く家電なので、Thread はまったく関係ありません。Wi-Fi につながるスマートリモコンが1台あれば足ります。
センサーやロックを足す段階でも、SwitchBot でそろえるなら Thread は不要です。SwitchBot の機器は Bluetooth でハブにつながり、Thread で直接つながる製品は 2026年時点では出ていないとされています。
Thread を検討する価値が出てくるのは、次のような場合です。
- Aqara や IKEA など、Matter over Thread で直接つながるセンサーや電球を使いたい
- メーカーごとにハブを増やさず、ボーダールーター1台に複数メーカーの機器をまとめたい
- 電池で動く機器をたくさん置きたい。Thread は省電力で、機器どうしが中継するので届きやすいとされています
つまり Thread は「センサーをどのメーカーで増やすか」を決めるときの話です。最初の1台で悩む必要はありません。
賃貸ならではの落とし穴:備え付け Wi-Fi
規格そのものより、賃貸で気をつけたいのはネット回線です。
Matter は、スマホと機器が家の中のネットワークで直接やりとりすることを前提にしています。全戸一括の備え付けインターネットでは、入居者どうしの通信を防ぐために端末どうしの通信を遮断する設定(プライバシーセパレーターなど)が有効になっている場合があり、そうなると Matter の登録で止まる可能性があります。Google のヘルプでも、Matter を使うにはホームネットワークで IPv6 を有効にしておく必要があると案内されています。
備え付け Wi-Fi の物件なら、機器を買う前に次を確認しておくと安心です。
- 自分のルーターを接続してよいか(管理会社・回線業者に確認)
- 2.4GHz の Wi-Fi が使えるか。SwitchBot のハブは 2.4GHz のみ対応です(2.4GHz と 5GHz の分け方)
まとめ
- Matter は保険、Thread は今は不要。賃貸で最初の数台をそろえる段階では、どちらも必須ではありません
- 判断基準1(使うアプリ):iPhone の「ホーム」アプリを使う、家族のスマホが混ざっているなら Matter 対応を選ぶ。差額が数百円なら対応版を選んでおく
- 判断基準2(ボーダールーターの有無):HomePod mini・Nest Hub(第2世代)・Echo(第4世代)などがすでにあるなら Thread 機器も選べる。ないなら、Thread のためだけに買う必要はない
- 判断基準3(買いたい機器):赤外線家電と SwitchBot 機器なら Thread は登場しない。Aqara や IKEA のセンサーを増やすときに考えれば十分
- 備え付け Wi-Fi の物件は、規格より先に端末どうしの通信と 2.4GHz が使えるかを確認する


